EC(Electronic Commerce)とは
ECとは、オンラインで商品やサービスを販売することです。近年ではWebサイト上で物販をするECサイトのほか、アプリ上で商品を販売する事業者も増えています。実店舗に比べて人件費や家賃などのコストを抑えられるうえ、立地や時間の制約を受けない販売方法として注目されています。
ECサイトの運営業務は主に2つ
ECサイトの運営業務は、フロント業務とバックエンド業務の2種類に分けられます。業種や体制によって違いがある部分もありますが、商品を売るための業務をフロント業務、商品が売れたあとの業務をバックエンド業務とするのが一般的です。
以下では、それぞれの業務内容について解説します。
フロント業務
フロント業務とは、マーケティング活動全般を指します。具体的には、フロント業務にあたるのは以下のような業務です。
- 商品の企画
- ECサイトの制作
- 商品の仕入れ
- 商品のプロモーション
フロント業務は、ECサイトの売上に直接的に関係する要素です。そのため、フロント業務に注力できなければ、売上を伸ばすのは難しくなります。
バックエンド業務
バックエンド業務とは、商品の販売後に行う業務です。具体的には、バックエンド業務にあたるのは以下のような業務です。
- 受注管理
- 在庫管理
- 梱包(ピッキング)
- 配送
- アフターサービス
バックエンド業務は、ECサイト上で商品が売れたあとの顧客対応を行います。ECを開始したばかりであれば販売数量もそれほど多くないため、手作業でも問題ありませんが、事業規模が拡大するにつれてバックエンド業務の自動化や効率化が求められます。
ECサイト運営の流れ
ECサイトにおける業務にはフロント業務とバックエンド業務の2種類があり、順を追って進めていく必要があります。しかし、それぞれのなかにも細かな業務がたくさんあるため、ひと通り流れに沿っておさえておくと安心です。
以下では、ECサイトにおける各業務の流れと内容について解説します。
商品企画
商品企画とは、ECサイト上で販売する商品を企画・検討する業務です。商品はECサイトにおける主役です。たとえECサイトのデザインが優れていても、訴求力に長けた広告を打っても、商品が魅力的でなければ売上にはつながりません。
商品企画においては、市場調査を実施して、顧客ニーズを把握することが重要です。顧客がどんな商品を欲しがっていて、競合他社がどんな商品を展開しているのかを知ることから始まります。
また、原価率や販売予測をもとに適正価格を探ることも役割の一つです。
仕入れ・製造
仕入れ・製造とは、ECサイト上で販売する商品を準備する業務です。他社メーカーの商品を販売する場合は仕入れ、自社メーカーの商品を販売する場合は製造となります。
商品を仕入れて販売する場合、事前に最低発注数量(MOQ)や最小発注単位(SPQ)を確認しておく必要があります。ボリュームディスカウントが適用される商品もあるため、できるだけ仕入れコストを抑えられるよう、発注のペースや数量も計算しておくとよいでしょう。
また、商品が予想以上に売れてしまった際に、機会損失が生まれないように備えておくことも重要な業務です。複数の仕入れ先を確保したり、迅速に対応できる業者を探したりしておくと安心です。
ECサイトの制作・更新管理
商品を販売するECサイトも売上を大きく左右する部分です。サイト制作の際に注意すべきポイントとしては、ユーザビリティとブランディングを意識することです。ユーザーは、秀逸なデザインではなく、視認性や操作性に優れたデザイン、ブランドイメージに合ったデザインが求めています。
また、ECサイトは制作して終わりではありません。制作後はたえず更新管理をしていくことが必須です。とくにECサイトにおいては、更新管理のなかでも「ささげ業務」が多くの割合を占めています。
ささげ業務とは、撮影・採寸・原稿の3つを指しており、ECサイト上に商品情報として登録する要素です。商品情報ページはユーザーが購入を判断する材料となるため、ささげ業務の質によって大幅に売上が変わる可能性もあるでしょう。
プロモーション・マーケティング
ECサイトにおけるプロモーションは、商品を販売するうえで必須要素です。広告手法としては、以下のようなWeb広告やマーケティング施策がメインとなります。
- リスティング広告
- ディスプレイ広告
- アフィリエイト広告
- コンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
Web広告は、オフライン広告に比べてターゲティングの精度に長けており、商品やサービスに興味をもっている層に絞ってアプローチできます。さらに小額から出稿できる仕様のサービスが多く、小規模の事業者でも運用しやすい点が特徴です。
また、広告費を捻出するのが難しい場合は、コンテンツやSNSを活用したマーケティング施策に取り組むのもおすすめです。社内で運用する体制を整えられれば、コストを抑えて集客を実現できるでしょう。
受注管理
受注管理とは、顧客が商品を購入した情報を受けて処理する業務です。ECシステムやモールなどによって受注連絡の方法やフォーマットは異なりますが、その後の対応に必要な情報が一括で送られてきます。
まずは顧客に対して注文確認とお礼のメールをしたうえで、出荷日の目安なども連絡できると親切な印象を与えられるでしょう。
在庫管理
在庫管理とは、在庫の量や保管場所を把握して調整する業務です。本格的にEC事業を手がける場合は、あらゆる在庫の情報をリアルタイムに管理する必要があるため、在庫管理システムを導入するのがおすすめです。
出荷・配送
出荷・配送とは、受注情報をもとにピッキングして配送事業者に引き渡す業務です。商品に応じた梱包資材の選定、スムーズな配送などは顧客満足度に影響します。そのため、サービスの質が問われる部分でもあります。
アフターサービス
顧客満足度を高めてリピーターを育成するには、商品を購入した顧客へのフォローも重要です。問い合わせや返品・交換への対応はもちろん、レビュー投稿を促すメールやクーポンの配信などもアフターサービスの一つです。
ECサイトの運営にかかる費用相場・時間
ECサイトの運営には費用や時間がかかります。各業務の負担は規模や商材に応じて大きく変動するため、一概に基準を示すのは難しいですが、ECサイトの構築にかかる費用や時間はある程度相場が決まっています。
構築方法 | ECモール | カートASP | オープンソース | ECパッケージ | クラウドEC | フルスクラッチ |
---|---|---|---|---|---|---|
初期費用 | 無料~10万円 | 無料~10万円 | 無料~300万円 | 300万円~ | 300万円~ | 1,000万円~ |
月額費用 | 無料~5万円 | 無料~5万円 | 5~30万円 | 5~30万円 | 5~30万円 | 30万円~ |
開発期間 | 不要 | 不要 | 約2~3か月 | 約3~6か月 | 約3~6か月 | 約6~12か月 |
ECサイトの運営に求められるスキル
前述のとおり、ECサイトの運営業務にはさまざまなものがあり、幅広いスキルが求められます。なかでも必須といえるのは、以下の3つのスキルです。
- Webマーケティング
- クリエイティブデザイン
- 接客・カスタマーサポート
以下では、それぞれのスキルについて解説します。
Webマーケティング(広告運用・SEOなど)
ECサイトにおける最大の課題は、Web上の露出を増やすことです。Web上には無数のECサイトがあり、あらゆる商品が出品されているため、自社のECサイトや商品を見つけてもらうための工夫が求められます。
とくにECサイトを開設して間もないうちは、ほとんどユーザーの流入が得られないケースも多く、Webマーケティングのスキルがないとまったく売上があがらない可能性もあります。
クリエイティブデザイン
クリエイティブデザインとは、サイトデザインや画像、バナーなどの制作スキルです。具体的には、PhotoshopやIllustratorなどの画像加工ソフト、HTMLやCSSを用いたコーディングなどのノウハウがデザインスキルにあたります。
接客・カスタマーサポート
ECサイトでは、実店舗のように直接接客する機会はありません。しかし、メールや電話を通して顧客とコミュニケーションをとる機会はあるため、接客やカスタマーサポートのノウハウは必須です。直接、顔を合わせてコミュニケーションをとれない分、真摯に対応して安心感を与える能力が求められます。
ECサイトの運営代行に強い会社5選
近年ではECに参入する事業者が増えており、運営事業者にかわってECサイトの運営業務を代行する企業も増加しています。
しかし、業務を完全にアウトソーシングできる代行業者を利用すると、社内の負担を軽減できる一方、社内にノウハウがたまらず外注しつづけなければいけない状況に陥ります。そのため、インハウスで運営する方法か、コンサルティング業者をつけて伴走する方法がおすすめです。
以下では、ECサイトの運営代行に強い業者について紹介します。
サヴァリ株式会社
サヴァリ株式会社は、中央区に本社を構える企業です。SNSや動画を活用したマーケティングを得意としており、ECモールから越境ECサイトまでサポートできます。事業投資において判断材料を収集できるテストマーケティングプランを用意している点も特徴的です。
アートトレーディング株式会社
アートトレーディング株式会社は、渋谷区に本社を構える企業です。カバーできる範囲が広く、ECサイトの制作や運営支援はもちろん、コンサルティングサービスも提供しています。物流システム「スマロジ」を独自開発しており、配送の面で強みをもっている企業でもあります。
株式会社ECホールディングス
株式会社ECホールディングスは、目黒区に本社を構える企業です。あらゆる事業規模のECサイトと取り引きしており、月商数万円から数億円規模までサポートできる柔軟性が魅力です。社内に広告運用の専門チームを設けており、リスティング広告の運用代行を得意としています。
株式会社これから
株式会社これからは、新宿区に本社を構える企業です。コンテンツマーケティングに関して豊富なノウハウを有しており、メディアコマースによる集客支援を強みとしています。
なお、株式会社これからでは自社ECサイトの運営代行を専門として取り扱っており、自社で独自のサイトを立ち上げている事業者におすすめです。
Hameeコンサルティング株式会社
Hameeコンサルティング株式会社は、渋谷区に本社を構える企業です。料金形態がわかりやすく、稼働時間に応じて費用が決定する仕組みとなっているため、ムダなコストがかかることはありません。
また、コンサルティングサービスでは、1か月の無料トライアル期間を設けている点も特徴的です。ECサイトのコンサルティングにおいて、どんなサービスが受けられるのかをイメージできない場合は活用してみるとよいでしょう。
ECサイト運営に関するよくある質問
ECサイトの運営に関して、疑問や不安をもっている方も多いのではないでしょうか。
以下では、ECサイト関連のよくある質問についての回答を紹介します。
EC運営に向いている人とは?
EC運営においてはさまざまな業務があり、あらゆるスキルが求められます。そのため、幅広い知識を吸収して、マルチタスクを処理できる人材が適任です。はじめからすべての知識をもっている必要はありませんが、新たな知識を得ることに関して苦手意識がない人が向いているでしょう。
EC運営にはどれくらいのスタッフがいる?
ECサイトを運営するうえで必要なスタッフの人数は、事業規模によって異なります。それほど規模の大きなECサイトでなければ、一人で運営することも可能です。
しかし、ある程度軌道に乗ってきて一定以上の売上を目指す場合には、各業務に専任の人材を置いたり、業務を効率化するシステムを導入したりする必要があるでしょう。
EC運営って辛いの?
ECサイトの運営業務は決して楽ではありません。業務が多岐にわたるため、幅広い知識が求められるほか、売上が大きくなるにつれて業務量も増加していきます。
しかし、Web関連やEC運営について知識や経験を積みたいと感じている方、マルチタスクで業務を進めるのが得意な方にとっては、貴重な経験が得られる場でもあります。
EC運営に資格は必要?
ECサイトの運営にあたって必須となる資格はありません。ただし、実務においては以下のような資格を取得しておくと役立つでしょう。
- ネットショップ実務士
- 通販エキスパート検定
- ITパスポート試験
- Webデザイン技能検定
- Webデザイナー検定
- マーケティング・ビジネス実務検定
- Googleアナリティクス個人認定資格
- ウェブ解析士
- Webアナリスト検定
EC未経験でも通用する?
未経験でもECサイトの運営に携わることは可能です。しかし、ECサイトの運営する職種につきたいのであれば、準備をしておくのがおすすめです。
たとえば、日常的にECサイトを利用したり、メルカリやヤフオク!などで中古品を販売したりすると、ECサイトを利用するユーザーの心理がわかります。
EC運営においてはユーザー目線でサービスを改善していくことが非常に重要です。そのため、ユーザーとして利用したり、実際に販売したりした経験は、運営業務においてもおおいに役立つはずです。
EC運営の求人はどう探せばいい?
EC関連の求人は、一般的な求人媒体やエージェントサービスに掲載されていますが、なかでも以下には数多くの求人情報があります。
- 求人ボックス
- マイナビ転職
- Indeed
- エンジャパン
また、楽天市場に出店しているECサイトの求人を限定的に扱っている「楽天仕事紹介」などの媒体を利用するのもおすすめです。
まとめ
ECサイトの運営においては基本的に資格や許認可は必要ないため、誰でも始められるビジネスといえますが、実務にあたるうえでは知識やノウハウが求められます。未経験でも問題ありませんが、業務の内容や流れをおさえておく必要があるでしょう。
また、業務負担が厳しい場合は運営代行を利用する手もあります。ただし、完全代行としてアウトソーシングしてしまうと、社内に運営ノウハウが残らないデメリットがあるため、一部業務のサポートやコンサルティングサービスを利用するのがおすすめです。