CVR(コンバージョン率)とは
CVRは、「Conversion Rate(コンバージョンレート)」の略称であり、コンバージョン率とも呼ばれます。コンバージョン率とは、Webサイトへのアクセス数のうち、「最終行動」にいたったユーザーの割合です。
企業によってWebサイトを運営する目的が異なるため、どんな行動をコンバージョンとするかは、サイトごとに違いがあります。たとえばECサイトにおいては、ユーザーが商品やサービスを購入することをコンバージョンと考えるのが一般的です。
コンバージョン率の計算方法
コンバージョン率は、「コンバージョン数÷ユーザーアクション数」の計算式で算出します。コンバージョンを「商品購入」とした場合、商品購入数をユーザーの起こすアクション数(サイトアクセス数やクリック数など)で割った数値です。
たとえば、1日あたり10,000回のアクセスがある商品ページで、1日の商品売上個数が100個だった場合、コンバージョン率は1%となります。一方、1日1,000アクセスしかない商品ページで、売上個数が30個だった場合はコンバージョン率が3%となるため、前者の3倍と考えます。
コンバージョン率が高ければ高いほど、より少ないアクセス数から大きな売上をあげられます。単純に売上個数を比較するのではなく、コンバージョン率を正確に把握したうえで、低い場合には改善施策を検討することが大切です。
ECサイトにおける平均的なコンバージョン率
ECサイトにおける平均的なコンバージョン率は、1〜3%程度です。しかし、商材や単価によっても幅があるため、平均値と比べて判断するのではなく、あくまでも自社の数値を前月比や前年同期比などで追っていくのがおすすめです。
また、広告経由よりも検索エンジン経由の方が、コンバージョン率は高いともいわれています。コンバージョン率が高いチャネルからの流入を増やせるよう、施策を講じていくことも重要です。
コンバージョン率が低い原因
ECサイトのコンバージョン率が他社に比べて低い原因としては、さまざまなものが考えられます。たとえば、自社サイトの広告手法が商材・ターゲットに適していない、ECサイトのUXが悪いなどです。
以下では、コンバージョン率が低い場合の、主な原因について解説します。
広告のターゲティングが適切でない
ECサイトにおける主な流入は、広告経由のユーザーです。メディアコマースやSNSなどに取り組んでいる場合は、広告以外のチャネルをメインとしている場合もありますが、基本的にはリスティング広告・SNS広告をはじめとするWeb広告です。
そのため、広告のターゲティングを適切に設定できていないと、コンバージョン率の
低下につながります。コンバージョンしているユーザーの属性や特徴を分析して、ターゲティングの精度改善を図りましょう。
ユーザー心理を意識できていない
商品やサービスを購入してもらうには、ユーザー目線でのサイト構築が不可欠です。事業者とユーザーの間で、それぞれのニーズに乖離が生まれるケースは少なくありません。
たとえば、事業者が押し出したい商品とユーザーが買いたい商品が異なるケースです。そのほかに、事業者は分析のために多くの顧客情報を求めますが、ユーザー目線では多くの情報を入力するのは手間です。
ユーザーにお得な商品・キャンペーンを目立たせたり、購入時の入力項目は最小限に抑えたりと、ユーザー心理を意識した設計にするのがポイントです。
市場環境が変化した
コンバージョン率が低下する原因として、外部要因も考慮すべきです。とくに大きな影響を与える外部要因は、市場の変化です。
たとえば、競合商品がSNS上でバズったり、トレンドが変わったりすると、ユーザーの購買意欲が下がるため、コンバージョン率も低下します。市場環境はつねに変化することを理解したうえで、市場環境の変化に対してアンテナをたてておくことが重要です。
ECサイトのCVR改善施策において重要なポイント
ECサイトを運営する事業者にとって、コンバージョン率の改善は最重要施策の一つです。実際に施策を実行する前には、いくつかの要点を把握したうえで、具体案を考えることが大切です。
以下では、コンバージョン率の改善を図るにあたって、おさえておきたいポイントを解説します。
ユーザーの離脱ポイントを特定する
まず、ユーザーの離脱ポイントを特定して、分析する方法があります。検証すべきポイントは、ユーザーの離脱ページと離脱理由です。
明確な理由を判断するのは難しいですが、仮説をたてて離脱を防止する施策に取り組んでみましょう。
コンバージョンしているユーザーを分析する
ユーザーの離脱を防ぐ施策と同時に、コンバージョンしているユーザーの分析にも取り組む必要があります。コンバージョンユーザーをセグメントしたうえで、ユーザーの属性・趣味嗜好などに特徴がないか探してみるのがおすすめです。
たとえ売上が少ない段階であっても、コンバージョンが発生している以上は、かならず背景に購買を後押しした理由が存在します。
コンバージョンユーザーの分析後は、コンテンツ設計時のペルソナ、広告のターゲティングなどに活用してみましょう。
仮説検証を繰り返す
離脱ポイントの特定、コンバージョンユーザーの分析をはじめ、あらゆる施策に取り組む際に必要となるのが仮説検証です。データを収集したとしても、明確な答えがわかるわけではないため、データの数値をもとに論理的な仮説をたてて検証するしかありません。
具体的な方法としては、ABテストやヒートマップ分析が効果的です。複数のパターンを試したり、実施前後のアテンションやクリックを分析したりして、クリエイティブやセールスライティングの最適化を図りましょう。
また、仮説検証を実施する際は、仮説の内容と施策の結果をまとめておくべきです。ノウハウを蓄積していくことによって、将来的に同じような課題が発生したときに活用できるデータになります。
ECサイトにおすすめのCVR改善施策
前述のとおり、ECサイトにおけるコンバージョン施策には、さまざまなアプローチがあります。しかし、基本的な実施方法やポイントは共通しています。そのため、まずは主な施策をおさえておくとよいでしょう。
また、施策を実行する際は、コンバージョンに近い部分から改善を図ると効率的です。たとえば、トップページよりもカートページの方がコンバージョンに近いため、コンバージョン率に与える影響は大きくなります。
以下では、ECサイトが実施すべきコンバージョン施策について解説します。
ターゲット・キーワードを絞る
ECサイトに限らず、Webコンテンツはターゲット・キーワードを絞ることが必須です。Web上における購入行動においては、ユーザーは特定のキーワードで検索して商品を探すケースがほとんどです。
そのため、Webサイトや商品ページに検索キーワードが含まれていなければ、ターゲットにリーチできません。
購入意欲の高いユーザーを集客する
コンバージョン率は、ユーザーの熱量によっても左右されます。そのため、購入意欲の高いユーザーを集客できれば、コンバージョン率を上げられます。
たとえば有名人やインフルエンサーが商品をおすすめした場合、ファンが商品に興味をもって流入するケースです。ECサイトを訪問する段階で購入意欲が高く、コンバージョンにつながりやすくなります。
同様に購入直後のユーザーも熱量が高い傾向があるため、リマーケティング広告などを利用して、できるだけ期間を空けずに再訪問を促す仕組みをつくるのも効果的です。
トップページを改善する
ECサイトを訪問するユーザーのうち、多くはトップページをランディングページとして流入します。そのため、トップページのUIやUXは非常に重要な要素です。
トップページの時点で魅力的な商品がなかったり、商品を探しにくかったりすると、せっかく獲得できたユーザーの離脱につながります。具体的には、直感的に理解できるカテゴリ分け、あらゆるニーズのユーザーに刺さるファーストビューなどを意識できるとよいでしょう。
ユーザーに合わせたサイト導線をつくる
ECサイトにおける、ユーザーの最終的なゴールは購入です。コーポレートサイトの場合、実績をみたかったり、求人に応募したかったりと、さまざまなニーズがあります。しかし、ECサイトでは、購入以外を目的とするユーザーはほとんどいません。
そのため、購入までの導線を意識して、サイトを設計するのがポイントです。商品を探しやすく、スムーズに購入できるような導線が理想的です。
モバイルデバイスに最適化する
いまや、多くのユーザーは、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスを利用しています。BtoBのコーポレートサイトなどでは、訪問者のうちパソコンユーザーの方が多いケースもありますが、一般的なECサイトにおいては大多数がモバイルデバイスです。
そのため、モバイルデバイスへの最適化は必須です。人気のカートASPや大手ECモールを利用するのであれば、基本的にすべてのプラットフォームが最適化されており、フルスクラッチで開発する場合などに注意したいポイントといえるでしょう。
多くの商品画像を掲載する
ECサイトの弱点は、実際に商品を手にとって見られないことです。そのため、あらゆる角度から撮影した画像を掲載したり、動画でリアルな商品イメージを伝えたりすることが重要です。
実際の色味やサイズ、ディテールなどをイメージしやすいようにできると、購入を後押ししやすくなるでしょう。
関連商品をレコメンドする
コンバージョン施策というよりも、売上向上施策に近いものではありますが、関連商品をレコメンドする方法も効果的です。ユーザーが購入を検討している商品、過去に購入した商品と相性のよい関連商品をレコメンドして、クロスセルにつなげる手法です。
レコメンドはタイミングが非常に重要で、購入に対する熱量が高いときにレコメンドできると、コンバージョンにつながる可能性が高まります。具体的には、カートページやサンクスページなどにおけるレコメンドを検討してみるとよいでしょう。
口コミ・レビューを集める
多くのユーザーは、商品の購入前にレビューや口コミを確認しています。広告の謳い文句や商品ページの説明文は、事業者がメリットを打ち出しているのに対し、口コミやレビューは第三者による客観的な意見です。
実際にヒートマップを確認してみると、ECサイト内のレビューの部分は非常に注目されています。そのため、レビューを投稿したユーザー限定のキャンペーンやクーポンなどを配信して、コストをかけてでもレビューを集めることが重要です。
カゴ落ち対策をする
カゴ落ちとは、カートに商品を入れたあとに離脱することです。カゴ落ちするユーザーは購入意欲が高いにもかかわらず、なんらかの理由によって離脱しているため、カゴ落ち対策はコンバージョン率の向上に有効です。
具体的には、カート落ちメールの送信、カート画面における離脱防止ツールなどがあり、大手のカートASPはカゴ落ち対策機能を実装しています。
接客ツールを導入する
ECサイトは、実際の店舗のように接客をしたり、にぎやかさを出したりできない点が弱みです。そこでチャットやポップアップなどの接客ツールを導入するのがおすすめです。
また、店舗の人気を伝える方法としては「〜人がこの商品を検討中」などのポップアップがあります。とくにそこまで知名度が高くない場合には、人気度合いを伝えることによって安心感も得られるでしょう。
CVR改善施策を成功させているECサイトの事例
前述のとおり、ECサイトにおけるコンバージョン施策には、定番のアプローチがあります。そのため、商材やターゲットによる違いもありますが、基本的な考え方は共通しており、他社の事例も参考になるはずです。
以下では、コンバージョン率を改善させた事例について紹介します。
beams
大手セレクトショップのbeamsは、コンテンツマーケティングによってコンバージョン率の向上に取り組んでいます。ECサイト上で店舗スタッフによるブログ記事を公開しており、内容は商品紹介やコーディネートが中心です。
Amazon
世界的ECモールのAmazonは、豊富なユーザーレビューを強みとしています。まだECモールが一般的でないころからEC事業を開始しましたが、オンラインで商品を購入するにあたって十分な情報を提供することによって、売上を大幅に伸ばしています。
ナイキ
人気スポーツブランドのナイキは、Web広告のキーワードを指名キーワードに絞ってコンバージョン率を高めました。指名キーワードとは、ブランド名や商品名などの固有名詞です。
一般名詞に比べて検索ボリュームが少ないため、露出は限られるものの、ナイキのように知名度のあるブランドにおいては効果的な戦略でもあります。
ダイソン
家電メーカーのダイソンは、コンバージョン率を高めるうえで、サポート体制に力を入れています。高価格帯の商品が多い同社では、ブランディングに注力すると同時に、カスタマーサポートも充実させており、ECサイトにおいてもサポートの充実度は一貫しています。
具体的には、電話やチャットによるサービスを提供するほか、ECサイト購入商品に対しても実店舗と同様のサポートを約束しています。
まとめ
ECサイトにおいてコンバージョン率の改善は、もっとも重要な課題の一つです。売上へのインパクトも大きいため、多くのECサイトがコンバージョン率の改善に取り組んでいます。
ECサイトのコンバージョン率を高めるには、さまざまなアプローチがありますが、まずは競合他社の事例をもとに自社で導入できそうな施策を検討してみるのがおすすめです。