カートASP(ショッピングカートASP)とは
カートASPとは、クラウド上で提供されるECシステムを利用して、自社の独自ECサイトを構築できるサービスです。HTMLやCSSをはじめとするWeb制作やWebデザインに関する知識がなくても、デザインテンプレートをもとに、直感的な操作のみでECサイトを構築できます。
通常、自社の独自ECサイトを構築するにはさまざまな知識やノウハウが求められますが、カートASPを利用すれば誰でも手軽にECサイトを構築できる点が特徴です。
カートASP以外の構築方法
Webサイトを構築する際にはさまざまな開発方法があります。ECサイトの場合、主な開発方法は以下の5つです。
- オープンソース
- ECパッケージ
- クラウドEC
- フルスクラッチ
- ECモール
カートASPを利用するメリット
カートASPのメリットは、手軽に開発や運用ができる点です。コストやリソースの負担を抑えられるため、はじめてECサイトを開設する方、一人でECサイトを運営する方などにも向いています。
以下では、カートASPを利用するメリットについて解説します。
開発や運用のコストを抑えられる
カートASPを利用すると、開発にかかる初期費用を大幅に抑えられます。一般的に自社ECサイトを立ち上げる場合、数十万円型数百万円ほどのコストがかかりますが、カートASPのなかには初期費用無料で利用できるサービスもあります。
また、カートASPは運用コストの面でも優れたサービスです。月額費用の固定費用は高くても数万円程度となっており、売上金額に応じた手数料のみで利用できるサービスも少なくありません。
専門知識なしで開発できる
カートASPの最大のメリットは、Web制作に関する専門知識がなくても、ECサイトを開発できる点です。自社独自のサイトでEC販売をするには、サーバーやインフラ、HTMLやCSSなどのプログラミング言語などへの理解が必須です。しかし、カートASPであれば既存のテンプレートを選んで、画像やレイアウトを決めるだけでECサイトを構築できます。
また、システムはクラウド上に構築されているため、自社のサーバーをもつことなく、ベンダーの構築した環境下で運用できるのも魅力的です。
つねに最新のシステムを利用できる
自社のサーバー上にシステムを構築する場合、日常的な保守をしなければいけないうえ、数年に一度は大規模な改修が必要です。オンプレミスのシステムは導入から年月が経つにつれて、システムの老朽化にともなうセキュリティ的に弱くなってしまうため、大きなメンテナンスは避けられません。
一方、カートASPのようにクラウド上で提供されるシステムは、ベンダーによって自動的にアップデートされます。そのため、日々の保守や大きなメンテナンスが必要なく、つねに最新のシステムを利用できます。
カートASPを利用するデメリット
カートASPのデメリットは、さまざまな制限や自由度の低さです。手軽に利用できる分、ほかの開発方法に比べると、融通が利かない部分が多く、本格的なECサイトの構築には向いていない面もあります。
以下では、カートASPを利用するデメリットについて解説します。
デザインや機能の自由度が低い
前述のとおり、カートSPではデザインテンプレートをもとにサイトデザインを組みます。もちろんメインビジュアルやレイアウトは変更できますが、カルーセルのサイズを変更したり、スライダーの速度を変更したりと、細かな調整までは対応できません。
細部までこだわってデザインを組みたい方は、HTMLやCSSの編集に対応しているカートASPを選ぶとよいでしょう。
また、オープンソースやECパッケージに比べると、機能の面でも劣っています。機能を絞ることによって、直感的な操作や低価格を実現しているため、カートASPに豊富な機能を求めるのは難しいでしょう。
商品数や画像容量に制限がある
カートASPのなかには、商品数や画像容量に制限を設けているサービスもあります。そのため、導入を検討する際はかならず事前に制限内容について確認しておくべきです。
なお、商品数や画像容量に制限があるサービスであっても、上位のプランを契約すると制限を解除できたり、オプションで上限を増やしたりできます。
カスタマイズができない
カートASPは、デフォルトのデザインや機能をのみで利用することを前提に設計されており、基本的に機能の追加や編集はできません。一部のカートASPは機能を追加できるプラグインやアプリなどが用意されているものの、プラグインやアプリでカバーできる範囲はそれほど広くない点には注意が必要です。
そのため、既存システムとの連携、社内の体制に合わせたカスタマイズを検討している方は機能面を確認しておくとよいでしょう。
【比較表】おすすめカートASP15選
カートASPの導入を決定していても、どのサービスを選べばいいか悩んでしまう方も少なくありません。ECの普及にともない、手軽にECサイトを構築できるカートASPを提供するベンダーの数も増加しており、数十ものシステムが候補にあがるはずです。
以下では、数多くのカートASPのなかでもおすすめのシステムについて紹介します。
Shopify
Shopifyは、世界的に利用されているカートASPです。もともとカナダで開発されたシステムですが、現在では175か国以上で利用されています。カートASPのなかでも機能が豊富なことで知られており、多言語・多通貨にも対応しているため、越境ECの構築にも適しています。
MakeShop
MakeShopは、業界大手のGMOグループが運営するカートASPです。ランキングやSNS連携をはじめ、販促系の機能が充実しており、マーケティングに力を入れたい方におすすめします。
さらに170種類のデザインテンプレートが用意されているうえ、HTMLの編集機能も実左往されているため、サイトデザインの自由度が高い点も特徴です。
BASE
BASEは、初期費用・月額利用料ともに無料で利用できるカートASPです。7種類の決済手段に対応しているほか、SNSとの連携機能も備えており、コストパフォーマンスに優れたカートASPです。
月額手数料が高い点が弱みでしたが、2022年4月からは決済手数料2.9%のグロースプランがも設けられ、月商にして17万円以上の事業者はグロースプランの方が向いています。
futureshop
futureshopは、デザイン性の高さが特徴のカートASPです。futureshop独自のCMS「commerce creator」ではサイト内のコンテンツをパーツ単位で管理できます。
月額22,000円で利用できるスタンダードプランのほか、月額81,000円のゴールドプラン、月額152,000円のオムニチャネルプランがあり、高価格帯のプランが充実しています。
STORES
STORESは、基本料金無料で利用できるカートASPです。約50種類のデザインテンプレートを利用できるうえ、簡単な分析機能も実装されており、無料のプランでも十分な機能を備えています。
また、売上を翌日に振り込み依頼できる「スピードキャッシュサービス」があるため、開設初期のキャッシュフローを安定させられるでしょう。
カラーミーショップ
カラーミーショップは、GMOペパボ株式会社が運営するカートASPです。開店や制作を代行するサポートも提供しているため、はじめてECサイトを立ち上げる方でも安心して利用できます。
また、WordPress上に商品ページを自動生成できるプラグイン、ブログをはじめとする外部サイトにJSカートを設置できるオプション機能も備えられています。
らくうるカート
らくうるカートは、ヤマトグループが提供するカートASPです。物流大手のヤマト運輸と提携しているため、カートASP上で発行されたIDをそのまま配送情報として利用でき、配送情報についても管理画面から確認できます。
クロネコペイやクロネコ代金後払いを利用できるのも特徴の一つです。
ecforce
ecforceは、定期購入に特化したカートASPです。月額費用は49,800円からと、カートASPのなかでは高額な部類に入りますが、その分顧客管理や分析に関する機能も充実しています。オールインワンのECシステムとして、マーケティング領域にも強みをもっています。
侍カート
侍カートは、オリジナリティの高いカートASPです。総合通販・定期通販の両方に対応できるだけでなく、独自開発のMAツールを実装しています。また、通常のカートASPに加えて、カスタマイズプランとフルスクラッチプランが設けられている点も特徴的です。
リピスト
リピストは、定期購入に特化したカートASPです。申し込みフォーム一体型LPを備えており、商品ページからダイレクトにサブスクリプション契約に進める仕様を実現できます。また、電話注文も同時に管理できるECシステムとして人気となっています。
サブスクストア
サブスクストアは、もともと「たまごリピート」の名称で運営されていたカートASPです。定期通販をはじめ、D2Cモデルや単品通販に最適化されており、業界トップシェアのECシステムとして知られています。
SQUAREオンラインビジネス
SQUAREオンラインビジネスは、業界最安レベルの手数料が魅力のカートASPです。それほど知名度は高くないものの、決済手数料が3.6%と低めに設定されているうえ、入金サイクルが最短翌営業日と早い点が特徴的です。
グーペ
グーペはGMOグループが提供するカートASPです。操作性に力を入れており、カートASPのなかでも操作がわかりやすいシステムとして人気です。一方、カスタマイズ性の自由度は低くなっているため、デフォルトの機能のみで問題ないかをチェックしておくことが大切です。
イージーマイショップ
イージーマイショップは、幅広い販売機能を備えたカートASPです。定期販売やセット販売に対応できるほか、予約販売やオーダーメイド販売ができる機能もあります。クーポンやポイントの付与もできるため、さまざまな販売方法を実現できるでしょう。
shopserve
shopserveは、APIに強みをもったカートASPです。GoogleやYahoo!の提供する広告プラットフォームはもちろん、アフィリエイト広告やcriteoとの連携にも対応しているため、さまざまな集客導線を設けられます。
カートASPを選ぶ際のポイント
前述のとおり、カートASPにはさまざまな種類があります。そのため、導入を検討する際はどんなポイントを重視して選ぶかを決めておくことが大切です。
以下では、カートASPを選ぶ際に重視すべきポイントについて解説します。
販売する商材
ECには大きく分けて総合通販と定期通販があります。総合通販とは商品が売れるごとに発送する販売方法、定期通販とはサブスクリプションのように自動継続される販売方法です。
一般的なモデルは総合通販となっており、多くのカートASPは総合通販用に開発されています。また、総合通販向けに開発されたカートASPは、定期通販には対応できないシステムがほとんどです。定期通販モデルで販売するのであれば、ecforceやリピストのような定期通販に特化したシステムを利用するのがおすすめです。
初期費用・運用コスト
ECサイトの目的は売上をあげることです。しかし、売上をあげることと同じく重要なのがコストを削減することです。
たとえ大きな売上をあげていても、ECサイトの運用にコストがかかっていればそれだけ利益は少なくなります。そのため、カートASPの導入にあたっては初期費用と運用コストの試算が欠かせません。
カートASPの利用料はリーズナブルに設定されていますが、販売手数料が高いサービスが多く、売上が大きくなるとコストパフォーマンスが低下するケースもあります。そのため、将来的な売上の目標を見据えて選ぶとよいでしょう。
管理画面の操作性・機能
管理画面の操作性や機能は、日々の業務に深く関係する部分です。操作性や機能に満足できないシステムを導入してしまうと、業務効率の悪化や負担の増加にもつながりかねません。
なお、管理画面の操作性や機能について検討する際は、実際に業務にあたる担当者の意見を取り入れることが大切です。無料トライアル期間を設けているサービスも多いため、まずは現場で試用してみて決定すると安心です。
登録できる商品数
一部のカートASPは登録できる商品数に上限が設定されています。ECサイトの開設後、商品数を新たに追加できなくなってしまうと、機会損失につながるリスクがあります。そのため、どのくらいの商品を販売するかによってシステムを選ぶのも一つの判断基準です。
なお、ECサイトを運営していくなかでは新商品を発売したり、既存商品のSKUが増えたりすることは珍しくありません。将来的な商品数の増加にも対応できるよう、ある程度余裕をもって計算しておくのがポイントです。
連携機能・オプション機能
カートASPは基本的に外部システムと連携できませんが、一部Google広告やFacebook広告との連携機能を備えたシステムもあります。ECサイトにおいては主な流入チャネルが広告となるケースも多く、外部の広告プラットフォームと連携できると非常に便利です。
また、SEOに強いECサイトを目指す場合は、ブログ機能がついているシステムを選ぶのも効果的です。ECサイトとブログを一体化させたメディアコマースは、コンテンツを充実させることで検索順位を高められます。
売上目標・売上規模
カートASPは大規模なECサイトの構築には適していません。そのため、目指すべき売上や規模によって決めるのがおすすめです。目安として月商数十万円までであれば、BASEやSTORESなどの無料カートASPでも十分対応できます。
しかし、数百万円以上を目指すのであれば、有料カートASPを利用すべきです。有料カートASPは分析や販促に関する機能が充実しており、販売手数料が低めに設定されているため、売上が大きくなるほど利益を高めやすい仕組みになっています。
なお、途中でカートASPを変更する方法もありますが、そもそもカートASPはシステムの乗り換えを想定して設計されていません。システムを乗り換えようとすると、大きな手間がかかってしまうため、一定以上の売上を目指すのであれば、はじめから有料カートASPを利用するとよいでしょう。
まとめ
手軽にECサイトを開発できるカートASPは、はじめてECに参入する方に非常におすすめです。開発にあたり専門知識が必要ないうえ、ECサイトの必須機能はもともと組み込まれているため、誰でも簡単にECサイトを運営できます。
しかし、あまりにも種類が多いため、どれを選んでいいか悩んでしまう方も少なくありません。そのため、事前に要件を定義しておき、要件に合致したカートASPを導入するのがおすすめです。