ECサイトの構築方法は2種類
ECサイトを開設して商品を販売するには、以下の2つの方法があります。
- ECモール
- 自社ECサイト
いずれもオンラインで商品を販売する点においては共通していますが、ECサイトの構築方法や管理の面ではさまざまな違いがあります。そのため、ECサイトの構築を検討している方は、どんな違いがあるのかを理解しておくことが大切です。
以下では、それぞれの構築方法について解説します。
ECモールに出品する
ECモールとは、Amazonや楽天市場のようなモール型のECプラットフォームです。プラットフォーム上には複数のショップが出店しており、出品者は一つのECサイトを共有します。
ECモールの場合、プラットフォーム上には既存のユーザーがおり、ユーザーはECモールの検索機能を利用するため、検索にヒットすればショップページへの流入を得られます。そのため、集客施策を講じずに売上をあげることも可能です。
また、EC事業を始めるにあたって、時間や費用がほとんどかからない点も特徴的です。ECモールへの出店手続きをするだけでECに参入できるため、もっとも手軽な方法といえるでしょう。
自社ECサイトを開設する
自社ECサイトとは、自社の商品を販売することを目的として、独自に構築されたECサイトです。グループや系列が同じであれば、複数のブランドの商品が販売されるケースもありますが、ECモールのように複数の事業者が参入することはありません。
自社ECサイトの場合、Web上に無数にあるECサイトの中から自社サイトを選んでもらう必要があります。そのため、リスティング広告やSNS広告などの集客施策が必須です。
ECサイトの開設や集客にあたってはコストがかかりますが、その分販売時の手数料が不要となるため、売上額が一定以上になるとECモールよりもコストパフォーマンスが高くなります。
ECサイトを構築できるプラットフォーム
ECサイトを構築する際には、土台となるプラットフォームを選ぶ必要があります。
先ほど紹介したECモールもプラットフォームの一つです。なお、自社ECサイトを構築するのであれば、主に以下の5つのプラットフォームがあります。
- カートASP
- オープンソース
- ECパッケージ
- クラウドEC
- フルスクラッチ
ECモール
ECモールは、手軽さに強みをもったプラットフォームです。構築にかかる費用や工数が少ないのはもちろん、運用中の保守もプラットフォーマーが対応します。
また、Amazonなどの大手ECモールであれば、受注管理や配送までを一括で外注できるフルフィルメントサービスを提供しています。そのため、倉庫や配送などのネットワークが整備できていない事業者でもECに参入可能です。
カートASP
カートASPは、手軽に自社ECサイトを構築したい事業者におすすめのプラットフォームです。手軽さの点ではECモールにおよびませんが、独自のECサイトを構築したい場合は有力な候補になります。
カートASPのなかには初期費用・月額利用料が無料で利用できるサービスも多く、その分販売手数料がすこし高めに設定されています。そのため、売上が一定以上になると、販売手数料だけでほかのシステムの月額利用料を超えてしまう点に注意が必要です。
しかし、ECサイトを立ち上げても売上があがるかはわからないため、まずはカートASPから始めてみるのも一つの手です。
オープンソース
オープンソースは、カートASPよりも本格的なECサイトを構築したい事業者におすすめのプラットフォームです。オープンソースを用いた構築では、サーバーまわりの設定やコーディングが必要になるため、開発の難易度は格段に上がりますが、デザインや自由度の高さも圧倒的です。ブランドイメージを反映したデザイン、自社の既存システムとの連携をはじめ、複雑な要件にも柔軟に対応できます。
一方、開発にかかる工数や期間については事前に確認しておくことが大切です。デザインの起案やワイヤーフレームの設計、コーディングによるサイト構築などを含めると、最低でも数か月は必要です。
また、オープンソースのソフトウェア自体は無料で利用できますが、外部の制作会社に開発を依頼する場合、要件によっては数百万円の費用がかかります。
ECパッケージ
ECパッケージは、ベンダーに依頼して本格的なECサイトを構築したい事業者におすすめのプラットフォームです。
ベンダーがECサイトの構築を目的として独自開発しており、デフォルトでさまざまな機能を備えています。さらに、ECパッケージはクライアントの要件に応じたカスタマイズを想定して開発されているうえ、EC開発を得意とするベンダーが担当するため、拡張性に長けている点も特徴的です。
しかし、機能が充実している一方、構築にかかる費用は高額になりがちです。また、数年ごとに定期的なメンテナンスが必要となりますが、メンテナンスの際にもベンダーが稼働するため、ある程度のコストがかかります。
クラウドEC
クラウドECは、オンプレミスではなくクラウドによって、本格的なECサイトを構築したい事業者におすすめのプラットフォームです。クラウド上にシステムを構築するため、つねに最新の状態にアップデートされたシステムを利用でき、数年ごとのメンテナンスも不要です。
また、システムとしてはカートASPとよく似ていますが、デザインや機能の自由度は大きく異なります。カートASPは最低限の機能を備えた、簡易的なプラットフォームですが、クラウドECは大規模ECサイトの構築にも対応可能です。
フルスクラッチ
フルスクラッチは、既存のシステムを利用せず、ゼロから開発したい事業者におすすめのプラットフォームです。フルスクラッチではすべてのシステムを新たに開発するため、どんな要件でも実現できる点がメリットです。
しかし、要件定義から開発までを含めると、半年から1年ほどの期間がかかるため、余裕をもったスケジュールを組んでおかないとリリースが間に合わなくなってしまうおそれもあります。また、長期にわたるプロジェクトでは、全体の進捗と個々の案件の担当者がわかりにくいため、しっかりと進行管理をしていくことも重要です。
ECサイトの構築手順・制作フロー
ECサイトの構築手順は、どのプラットフォームを選ぶかによって異なります。しかし、おおまかな流れとしては、基本的に同じです。
以下では、ECサイトを制作するためのフローについて解説します。
ECサイトに限らず、Webサイトを立ち上げる際にはコンセプトが必須です。ECサイトの場合、ブランドのイメージや主なターゲット層、商材などを勘案しつつ、コンセプトを決めていきます。
サイトコンセプトの時点で、ブランドのイメージにそぐわなかったり、ターゲットに刺さらなかったりすると、サイトや商品が魅力的でも売上にはつながりません。
次に、サイトコンセプトをもとに要件を定義します。要件とは、ECサイトにおいて必須となる機能や条件です。たとえば、グローバルナビゲーションに入れたい項目、サイト内検索や定期販売などの機能も要件の一部です。
要件定義の段階では、プロジェクトに携わるメンバーやベンダーとの間で、イメージをすりあわせておく必要があります。しっかりと要件を網羅できていないと、イメージと異なるECサイトになってしまうリスクが高まります。
要件定義であがった要件をもとに、開発方法やECシステムを選びます。開発方法を選ぶ際は予算とサイト規模、ECシステムを選ぶ際は機能が主な基準になります。
適切なシステムを選べないと、想像していたデザインや機能が実装できなくなってしまうため、注意深くチェックしておきましょう。
サイトデザインは、ECサイトの売上を左右する要素です。そのため、サイトデザインの制作は非常に重要な工程といえます。
サイトデザインにおいては、ユーザー目線でどう見えるかを意識することが大切です。売上をあげられるECサイトは、魅力的なデザインのサイトではなく、ブランドのイメージに合ったデザインのサイトです。
自社のブランドやターゲットにはどんなデザインがふさわしいかを検討してみましょう。
ECシステムが決まり、サイトデザインまで完成すると、サイト構築はほぼ終わりです。しかし、ECサイトができても、商品がなければ販売を開始できません。そこで必要となるのが「ささげ業務」です。
ささげ業務とは、以下の3つの業務を指します。
- 撮影(商品の撮影)
- 採寸(商品の採寸)
- 原稿(商品ページの原稿作成)
いずれもECサイトにおいて、ユーザーが商品の購入を判断する材料となる情報です。商品の長所や詳細情報が伝わらないと、ユーザーの離脱につながりかねません。
ECサイト構築にかかる費用の目安
前述のとおり、ECサイトの構築方法は、予算とサイト規模から決めるのが一般的です。しかし、具体的にどんな基準で選ぶべきなのでしょうか。
ECサイトの構築方法ごとの費用目安は、以下のとおりです。
構築方法 | ECモール | カートASP | オープンソース | ECパッケージ | クラウドEC | フルスクラッチ |
---|---|---|---|---|---|---|
初期費用 | 無料~10万円 | 無料~10万円 | 無料~300万円 | 300万円~ | 300万円~ | 1,000万円~ |
月額費用 | 無料~5万円 | 無料~5万円 | 5~30万円 | 5~30万円 | 5~30万円 | 30万円~ |
販売手数料 | あり | サービスやプランによる | なし | なし | なし | なし |
自社に適したECシステムの選び方
ECサイトの構築前には、構築方法とECシステムを選ぶ必要があります。しかし、どんな基準で選べばいいのか、悩んでしまう事業者も少なくありません。
以下では、自社に適したECシステムの選び方について解説します。
年商・事業規模・コストで選ぶ
もっとも重視すべきポイントは、どれくらいの規模のECサイトを目指すかという点です。たとえば、年商10億円規模のECサイトを構築する場合、ECモールやカートASPを選ぶべきではありません。ECモールやカートASPは販売手数料が高めに設定されているため、ある程度の売上を見込んでいるのであれば、別の構築方法を選ぶべきです。
反対に、年商数百万円規模のECサイトにECパッケージやクラウドECは適していません。導入や運用にかかるコストを回収できないため、コストを抑えて構築できる方法を選ぶのがおすすめです。
社内のスキル・ノウハウで選ぶ
社内にスキルやノウハウをもった人材がいるかどうかも重要なポイントです。オンプレミスの場合、トラブル発生時の一次対応は自社になる可能性が高く、社内に専門知識をもった担当者がいないと運用は難しくなります。
一方、社内に専門部署を設けて、本格的にEC事業をスタートさせる場合、フルスクラッチでの構築も選択肢に入ります。インハウスで構築や運用ができるのであれば、フルスクラッチで開発しておくと、よりスムーズなPDCAが可能です。
システムの安定性・サポート体制で選ぶ
システムを導入する際は、導入後の運用を見据えておくことが大切です。そのため、システムの安定性とサポート体制はかならずチェックしておきましょう。
システムの安定性は、メンテナンスやシステムエラーの頻度から判断します。システムの口コミを調べると、実際に利用したユーザーの情報が得られるため、参考になるはずです。
また、サポート体制は、導入前にベンダーに問い合わせてみるとよいでしょう。メールや電話などの問い合わせ手段、レスポンスまでのスピードなどをチェックしておくと安心です。
【比較】ECサイト構築におすすめのシステム11選
ECサイトを構築できるシステムにはさまざまな種類があるため、一つずつ調べていく作業は結構たいへんです。そのため、まずは大手のシステムを中心に調べてみるのがおすすめです。
以下では、おすすめのシステムについて紹介します。
【無料】BASE
BASEは、国内でトップクラスの知名度を誇るカートASPです。2020年時点で120万以上のショップに利用されており、初期費用・月額利用料ともに無料に設定されています。スモールスタートに向いているため、コストを抑えて運用したい事業者におすすめです。
【無料】STORES
STORESは、リーズナブルな料金で利用できるカートASPです。Instagramとの連携機能なども実装されており、SNSを活用したキャンペーンなども実施しやすいでしょう。また、定期的にセミナーを開講しており、EC運営についてプロのレクチャーを受けられます。
【無料】カラーミーショップ
カラーミーショップは、幅広い事業規模に対応できるカートASPです。一般的にカートASPは中小規模の事業者向けのシステムとなっていますが、プラチナプランでは数千万円規模のECサイトにも対応できます。
【有料】MakeShop
MakeShopは、GMOグループが提供するカートASPです。業界大手の企業によるサービスということもあり、システムの安定性やサポート体制には定評があります。電話やメールによるサポートに加えて、掲示板なども設けられており、1~2営業日でアドバイザーからの返信が受けられます。
【有料】Shopify
Shopifyは、世界的に利用されているカートASPです。ベーシックプランは月額29ドルから利用でき、サイトの規模や要件に応じて3つのプランから選択できます。また、3つのプランとは別に、Shopify LiteやShopify Plusなどもあるため、いずれのプランもニーズに合わない場合は検討してみるとよいでしょう。
【無料】EC-Cube
EC-Cubeは、ECサイトの運用に特化したオープンソースのCMSです。オープンソースは海外製のものが多いですが、EC-Cubeは日本で開発されたプラットフォームです。そのため、機能やサポートはすべて日本語で提供されており、日本人向きのシステムといえるでしょう。
【無料】Magento
Magentoは、越境ECに対応可能なオープンソースです。越境ECでは、多言語・多通貨への対応をはじめ、独自の要件が盛り込まれますが、Magentoであれば国外で展開するための各種要件に対応できます。
また、一つのCMSで複数サイトを管理できるマルチサイト機能も特徴的です。
【無料】Welcart(WordPress)
Welcartは、WordPress上でEC機能を実装するプラグインです。大手CMSのWordPressは世界的に利用されていますが、商品を販売するための機能がなく、本来ECサイトの構築には対応できません。
しかし、Welcartを導入すると、WordPressで構築したサイト上に、カート機能や決済機能を実装できます。WordPressで構築したサイトは情報発信に適しており、SEOに強いECサイトを構築するにはおすすめです。
【有料】ecbeing
ecbeingは、マーケティング機能に強みをもったECパッケージです。セールキャンペーンやレコメンドのほか、RFM分析などの機能も備えており、さまざまな観点からマーケティング施策を実行できます。
また、24時間365日体制で常駐管理をしており、セキュリティ対策に力を入れている点も特徴的です。
【有料】EC-ORANGE
EC-ORANGEは、あらゆるビジネスモデルに対応できるECパッケージです。モール型やBtoB、会員限定サイトなどの特殊な要件にも対応できる柔軟性を備えています。
また、ソースコードを開示しているため、外部のベンダーを採用してEC-ORANGEをベースに開発することも可能です。
【有料】ebisumart
ebisumartは、業界トップシェアを誇るクラウドECです。年間250回以上のアップデート実績があり、クライアントは毎週無料でアップデートできます。
また、年間稼働率も99.95%と非常に安定したサービスを提供しており、機会損失につながるリスクもきわめて低いでしょう。
ECサイト構築の準備として読みたい本
ECサイトの構築をする前には、ある程度知識をつけておく必要があります。ECサイトの開発や運用にはスキルやノウハウが求められますが、未経験だと不安なこともあるでしょう。そこでECサイトの仕組みや構築手順を開設した本を読んでおくのがおすすめです。
ひとりEC 個人でも売上を大きく伸ばせるネットショップ運営術
日本ではじめてShopify教育パートナー認定を受けた三浦氏が執筆した書籍です。過去には注文単価160%、リピート率200%を実現しており、十分な実績をもっています。EC運営を成功させるノウハウがつまった一冊です。
図解即戦力 EC担当者の実務と知識がこれ1冊でしっかりわかる教科書
EC運営における実務全体を解説した書籍です。基本的な業務だけではなく、販促イベントやカゴ落ち対策など、実務に活かせる理論も紹介している点が特徴的です。
EC担当者 プロになるための教科書
9,800社以上のECマーケティング支援実績がある企業のメンバーが執筆した書籍です。過去の事例や取り組みをもとに解説されている部分が多く、リアリティのある内容に仕上がっています。
ECサイト構築についてよくある質問
最後に、ECサイトの構築にあたり悩みやすいポイントについて、FAQ方式で紹介します。
ECサイトの構築は制作会社に依頼すべき?
ECサイトの構築は、かならずしも制作会社に依頼する必要はありません。ECモールやカートASPであれば、知識がなくても問題なく開発できます。
一方、本格的なECサイトを立ち上げて大規模サイトへ成長させていきたい場合は、制作会社に依頼するのがおすすめです。
メディアECは構築方法が違う?
メディアサイトとECサイトが一体となったメディアECを立ち上げるのであれば、WordPressのように発信力に長けたCMSを利用する必要があります。ECシステムのなかにはテキストコンテンツの作成に向いていないものもあるため、メディアサイトの構築にも利用できるプラットフォームを選ぶとよいでしょう。
ECサイトの構築にはどんなプログラミング言語が必要?
ECサイトの構築には、クライアントサイドのHTML・CSS・JavaScript、サーバーサイドのPHPなどが必要になります。実装したい機能によっても異なるため、要件を定義したタイミングでどんな言語が求められるかを確認してみるとよいでしょう。
化粧品・コスメECの構築で注意すべきポイントは?
化粧品やコスメは、全国的に実店舗が展開されており、ECでシェアを獲得するのが難しい業界です。実店舗と比べて、商品を試したり、スタッフに相談したりできないデメリットもあるため、別の部分で差別化を図る必要があるでしょう。
食品ECの構築で注意すべきポイントは?
食品業界は、全体的にEC化率が低く、EC事業で大きな成功を収めた企業も少ない業界です。スーパーやコンビニの利便性が高く、ECに対する需要が少ないことに加えて、ECでは手に取って商品を選べない点がネックとなっています。
一方、コロナ禍以降はネットスーパーへの需要が高まっており、今後新たな需要が生まれる可能性もあるでしょう。
まとめ
ECサイトの構築にあたっては、プラットフォームの選定、スケジューリングなどの課題があります。ノウハウや知識が必要とされる部分も多く、はじめてEC事業に挑戦する方は悩んでしまうことも多いでしょう。
しかし、コンセプトや要件の定義、予算や規模に応じたシステムの選定と、適切な順序で進めていけば、きっと成功させられるはずです。しっかりと計画をたてたうえで構築を進めていけるとよいでしょう。